鷲林寺ご詠歌
山寺なのに何故「入船」なのか??

いりふねの  まつをたよりに  じゅうりんじ  わがみのふねの  でるをしらぬか

便

鷲林寺は海抜340メートルの山中にある山寺です。海まではほど遠い六甲山中に位置します。にもかかわらず、鷲林寺のご詠歌に
入船のまつを便りに鷲林寺』と詠まれています。
この句は、「入船」すなわち、港に船が入ってくる様子をご詠歌として詠んでいます。しかし現在の鷲林寺は山中にありますから、山の中にあるものをご詠歌の題材に詠むのが自然だと思います。では何故、山に関わる題材ではなく、「入船」なのでしょうか?
聞くところによると、昔の西宮近辺の地形は現在のものではなく、現在の「広田」あたりまで海が迫っていたといいます。現在も広田あたりで貝の化石が出土するといいます。そんな関係で、鷲林寺から船が入ってくるのがよく見えたのかもしれません。
また、鷲林寺はその昔、広い寺領を有し、たくさんの僧堂があったといいます。一番勢力のあった時期は現在の「鳴尾」あたりまで寺領であったということが西宮市史の記録に残っています。このような関係で、この句をその当時、港の近くで詠まれたものかもしれません。
いずれにしても、現在の鷲林寺からは想像できないご詠歌の内容であると思います。ここにも歴史のロマンを感じることができます。

ご詠歌の書かれた古い額



先代住職の筆による句碑


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